辺境騎士団のお料理係!~捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります~

 先に動き始めたのは、ラースだった。力強く地を蹴る彼の足取りは軽い。そのあとからメルリノも懸命についていくが、差はどんどん広がる一方だ。

 メルリノなら一人にしても危険はないと判断し、ラースは速度を上げた。

 ラースの耳に届くのは、地面に落ちている枯葉を踏みしめる音。そこに時々ぽきっと枝を踏む音が重なる。

(……なんだ? 魔物じゃない、よな……それに、動物でもない……二本足、この森にサルはいない……ということは、魔族か?)

 人間の世界に人間と動物が存在するように、人が足を踏み入れない世界にも魔族と魔物が存在する。魔族は、人と同程度の知能を持ち、会話をすることも可能だ。

 一般的にはほとんど会話もしないのだが、上手に交渉すれば、いきなり戦闘になることはないはず。人間に友好的な魔族の存在をラースは知っていた。

(しまった、メルリノを待つべきだったか……?)