辺境騎士団のお料理係!~捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります~

 この地はしばしば魔物に襲われる危険な地なので、領地の屋敷には料理人が来てくれない。料理のできる地域住民から料理を教わり、騎士団員達が交代で料理をして食事を賄っているのだが、どうしても大雑把なものになる。料理上手な団員もこの十年配置されていないし、結果的に煮込んで味を整えればどうにかなるという煮込み料理が提供される機会が一番多い。

 ラースにしてもメルリノにしても、料理は栄養が取れればいいし、そこまで味にこだわっているつもりもないので、煮込み料理で十分ではあるが、正直飽きた。

「……ん?」

 不意にラースが足を止めた。メルリノも、兄に従うようにして足を止める。

 二人その場で動きを止めたまま、用心深く周囲に視線を走らせた。耳をすませ、できる限り広範囲の物音を聞こうと試みる。

「あっちだ!」