辺境騎士団のお料理係!~捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります~

 水筒の水をごくごくと飲んだメルリノは、手で口元についた水滴を拭う。ようやく落ち着きを取り戻し、周囲を見回す余裕が生まれたみたいだった。

「で、今日は何を狩るんでしたっけ」
「ハッピーバニーをそろそろ間引いた方がいい気がするんだよな」
「あー、あいつらぼこぼこ増えますもんね」

 ハッピーバニーとは、この地で一番多く見られる魔物である。とにかくぴょんぴょん跳ね回るため、一般の人間では捕まえるのも退治するのも難しい。

 繁殖力が強い魔物で、一頭見かけたら五十頭いると思えとも言われているほどだ。定期的に間引かないと、森から溢れてきてしまう。肉はたいそう美味なため、辺境伯家では一番食卓に乗ることが多い魔物でもある。

「今夜は、ハッピーバニーのシチューがいいですね」
「煮込み料理が一番ましだもんな」
「それは言わないお約束」

 兄弟は、肩を並べて歩き始めた。