腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め





街をゆっくり歩いて面白そうな店を探してみたりしたい。

鷹司もいることだし、少し荷物が増えたって大丈夫だもの。


──だけど私は、車を降りてすぐにそれを後悔することになった。




「何よこれっ、人……多すぎ……」




目的地までのメインストリートは、想像していた五倍以上の人出だった。

しかもよく見ると、どうにもカップルらしき男女が多いように思える。


その理由は、私のすぐ近くを歩く鷹司が教えてくれた。




「本日はクリスマスイブでございますからね」




イエスキリスト誕生日の前日。

この国の人たちはなぜか恋人同士で過ごしたがる日。




「完全に忘れてたわ……」




だって私にとっては単なる冬休みの一日よ。

さてさて、この浮かれて人たちのうちいったい何人がキリスト教徒なのかしらね!!




「『今日がクリスマスイブであることを忘れて街に出たお嬢様が、楽し気な恋人たちの姿に羨望の眼差しを向けていらっしゃいます』っと」


「隙あらばSNSに呟くんじゃない! あと別に羨ましがってもないわよ!」