腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め


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「出掛けるわよ」



私がふと思い立ってそう言ったのは、冬休みの初日の昼前。

悔しいことに、どこかの執事に休日の早起きと勉強を癖付けられていたので、時間に余裕があった。




「どちらへ?」


「買い物。年明けに親戚の集まりとか色々あるだろうし、服やアクセサリーを新調しておこうと思って。いつもの店に予約入れといてくれる?」


「承知いたしました」




鷹司は微笑を浮かべながら答えると、店の予約や車の手配など、テキパキと準備を進めていく。

そういう無駄のない動きを見ていると、やっぱりこの執事はよく仕事ができるのだと再認識する。




「髪も直して」


「どのようになさいますか?」


「いつも通りでいいわ」




鷹司が初めてうちに来た日、彼は私の癖のある髪をいとも簡単に扱ってくれた。

それ以来、私は味を占めて出かける前のヘアセットは自分でやらなくなった。自分でやる100倍は綺麗に仕上がるし、ケアまでしっかりしてくれるので、髪の痛みも減った。