とても生き生きとした表情でとぼけてくる。
まあ、素直に言うことを聞いてくれるだろうなんて期待は最初からしていないので、わざとらしいため息だけ返しておいた。
「しかし、思わぬタイミングでようやく弟君のお顔を拝見できました。目元がお嬢様にそっくりでございますね」
「そうそう、顔は似てるのよね。よく言われる。……そういえば、貴方は兄弟とかいるの?」
「ええ。兄が一人」
答えがあったことにちょっと驚いた。
話の流れでちょっと聞いてみたものの、秘密主義のこの男のことだから、どうせまたはぐらかされるだろうと思っていた。
「ふうん。似てる?」
「いえ、全く似ていませんでしたね。容姿も性格も」
鷹司は軽く耳に触れて、懐かしむように言う。
そうか。当然だけど鷹司にも家族はいるんだ。
そう思うと、どこか得体の知れないこの男に、少しだけ人間味が増した気がした。
「名前より先に家族構成を知るとは思わなかったわ」
「わたくしのファーストネームがそんなに気になりますか?」
「貴方が隠すからでしょ」



