鷹司は小さなトレイに載せたティーカップを机に置く。
それから、カメラの方に向かった恭しく礼をした。
「お初にお目にかかります。まいお嬢様の専属執事を務めさせて頂いております、鷹司と申します。累様のお噂はかねがね」
『へえ、あなたが……どうも、岸井累です。姉が世話になってるみたいで』
「こちらこそ、お嬢様のおかげで退屈とは無縁の毎日を送らせていただいておりますよ」
当たり障りのない話で笑い合う二人。
鷹司は、私以外が相手だと普段の飄々とした態度を決して表に出さず、本当にただ優しくて完璧な執事として振る舞う。
累もそんな鷹司に無事騙され、「良い専属執事が付いてよかったね、姉さん」と笑顔で言って通話を終了させた。
私はモニターの電源を切った後、ティーカップを手に取りながら横目で鷹司を睨む。
「あんたね、あの耳元で囁くやつやめなさいよ。普通にしゃべれば聞こえるっての」
「はて、何のことでございましょう」



