腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め




いけない、口が滑った。

怪訝な顔をする累に、私は笑顔で誤魔化す。

鷹司がどう変態なのかを説明するには、必然的に私にとって恥ずかしいシチュエーションを話さなくてはならなくなる。




「本当、謎が多くて嫌になるの。だって私、鷹司のファーストネームすら知らないのよ?」


『そうなのか? オレ、誰かから聞いた気がするけど』


「ええっ嘘!? な、何て名前なの?」


『うわ、食いつきすぎだろ。ええと、何だったかな。確か……』


「確か?」


「困りますねぇ、わたくしの個人情報をそう簡単に広められては」




ドキドキしながら累の答えを待っていると、突如耳元で色気を含んだ声に囁かれた。

驚きすぎて「ひえゃっ」と、情けない叫び声を上げてしまう。


恐る恐る顔を横に向ければ、妖艶ながらも胡散臭い笑みを浮かべた鷹司の顔が間近にあった。



「失礼いたしました。お茶をお持ちしたのですが、お話に夢中でノックしても気付かれないようでしたので」