腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め





「では頑張ったお嬢様に、ご褒美のキスをして差し上げましょうか」


「なっ……い、いらないわよ馬鹿じゃないの!?」


「そうですか。では、英語と現代文以外は赤点を取ってしまったペナルティーとして、お嬢様からキスをしていただきましょう」


「どっちにせよ唇狙いにくるのやめなさいよ! そもそも、そういうのって後出しはズルいでしょう!」


「残念。どんな結果でもわたくしが得をする作戦だったのですが失敗ですね」


「ったく。やめてよね……私には奏多くんという大好きな人がいるんだから」


「その柳沢様は彼女持ちでございますけどね」



にこやかに言われて、うっと言葉に詰まる。


そうなのだ。

私の片想い相手は彼女持ちだ。


奏多くんの彼女・香田葉澄には、思わず守ってあげたくなるような可愛らしさと、周囲を笑顔にする朗らかさがあって。



そう。あの子は、まさに私の憧れる恋物語のヒロインのような女だ。