あっさり言ってのけるけれど、本当にただパラパラしてるだけだったわよ?
この男、色々と無駄な才能を持っているらしい。
「お嬢様。貴女はこれらの小説に出てくるような、愛される悪役を目指してみてはいかがでしょう」
そしてまた、意味のわからないことを言いだすのだ。
「お嬢様は、悪役の人間らしい感情に共感してしまいつつも、愛されるヒロインに憧れている。そうでしたね」
「……ふうん、一応私の話聞いてたのね」
「もちろん。お嬢様の口から発されるお声は、吐息であっても聞き逃しませんよ」
笑顔で言うな変態執事め。
だけど、いちいち言い返していては話が進まないのでどうにか口を閉ざす。
「愛されるヒロインになれないのなら、芯があってまっすぐな、愛される悪役になる。……いかがでしょう、名付けて『愛され系悪役令嬢化計画』でございます」
愛され系悪役令嬢化計画。
何よそれ。
何なのよその……ちょっとわくわくするネーミングは。



