「おやおやもう降参ですか。岸井家ご令嬢も大したことありませんねぇ」
「いちいち腹立つ言い方を……」
おかしい。執事ってこうやって主のことを馬鹿にするものだったかしら。
「では答えをお教えしましょう。お嬢様から向かって左側のボックスには、共通してとあるキャラクターが登場します」
「え? シリーズも作者も出版社もバラバラよ? 同じキャラが出てくるわけないじゃない」
「もちろん同じ人物が出てくるという意味ではありません。共通して出てくるのはずばり……『愛される悪役』です」
「愛される悪役?」
何よそれ。
怪訝に思いながらも、頑張ってそれぞれの小説のストーリーを思い出してみる。
えっと、確かこっちの話の敵キャラは後から主人公の味方になってたわね。あっちのはライバルながらも正々堂々としていて好感度は高かった……。
でもってこれは、そもそも悪役令嬢なるものが主人公で……。
「おわかり頂けましたか?」
「まあ……。ていうか貴方、さっき一瞬見ただけなのに、もう全部の小説の内容を把握したの?」
「ええ、これくらいの量ならそう難しいことではございません」



