腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め



まあ、そのうちどこかで口を滑らせるでしょう。

今は追及しないでおいてあげよう。私はそう思って話を変えた。




「そういえば貴方、さっき学校では、どうして私の目の前に現れたの?」


「と、おっしゃいますと?」


「迎えに来たなら、普通学校の敷地外で待つでしょう。なのに貴方は体育倉庫の前にいた私の背後にいきなり現れた。うちの学校、部外者の出入りは厳しいはずよ? 面倒な手続きを踏んでまで敷地内に入る必要あった?」



これは最初から気になっていたことだ。

普通にうちの車の前にいれば、私からもう少し怪しまれずに済んだのに。


すると鷹司は、相変わらずの胡散臭い笑顔でサラリと言った。



「ああ、学校には忍び込んだので面倒な手続きを踏んではおりません。ご心配なく」


「……は? 何て?」


「特に面倒な手続きは経ていないのでご心配なく」


「そこじゃないわよ! 貴方今、忍び込んだって言わなかった?」



さすがに聞き間違いよね……と思いたかった私に、鷹司は口元の微笑を崩さないままわずかに首を傾げて、当然のように「ええ」とうなずいた。