腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め



鷹司はそんなことを言いつつ、出しっぱなしになっていたヘアアイロンやスタイリング剤をとって、手早く髪をまとめていく。

じっと鏡を見つめていると、いつの間にやら私の髪は別人のもののようにまとまり、傷んでいたはずの毛から艶が出てきた。



「いかがでしょう」


「……まあ、悪くないわね。執事辞めて美容師に転職すれば?」


「お褒めの言葉、光栄です」



生意気な。

私はフンと鼻を鳴らしてから、座ったまま振り返り、鷹司の顔を見上げる。

少しだけ、この執事に興味を持ってあげることにした。



「たかつかさ……舌噛みそうな名前よね」


「時々噛みますよ」


「自分の名前で? 嘘でしょ?」


「もちろん嘘です」


「あんたね……。ていうか、どっちかっていうと岸井よりそっちの方がなんかお金持ちっぽいわ。ちなみにファーストネームは何というの?」


「申し訳ございません、それに関しては黙秘いたします」


「何でよっ!?」



意味不明。ちょっと話しただけなのにどっと疲れた……。

ていうか、私がせっかく話振ってあげてるのに何なのよこいつ。

あ、よほどのキラキラネームなのか。うん、きっとそうね。苗字かっこいいのに可哀想だこと。