「とはいえ、まずは執事としてきちんと役立つことを証明せねばなりませんね」
何を思ったのか、鷹司はドレッサー前の椅子を引き、私に座るよう促しながらそう言った。
「お嬢様は先ほど、自分のことは自分でできるとおっしゃっていましたが、日々のヘアアレンジもご自分で?」
「まあ基本的にはね」
「それは素晴らしい。ですが少々、傷みとハネが目立つようです。失礼」
鷹司は断りを入れてから、優しい手つきで私の髪に触れる。
髪のセットは、正装をするときなんかは人にやってもらうけれど、普段学校へ行くときなどは自分でしている。
どうしてかといえば、ギリギリまで寝ていたいから。どうせ少しとかしてカチューシャを付けるぐらいなので、わざわざメイドを呼んだりもしない。
だから、こうして誰かに髪を触られるだけで少しむずがゆい。
「軽くウエーブがかかっているのは、癖でしょうか」
「ええ。昔からね」
「ではそれを活かす方がよろしいですね」



