「帰りの車なんて笑顔ゼロだったんだよ?あのさわやか営業マンの深山さんが。」
「へー」
芽衣子も冴子もニヤニヤしている。

「あ、そういえば、深山さんが水惟のLIME知りたそうにしてたけど。」
「え?」

「教えていいか、水惟に確認しましょうか〜?って聞いたら、“絶対断られるだろ”って言ってた。」
芽衣子は蒼士のモノマネをしながら言った。

「ねえ水惟、深山さんにLIME教えちゃダメ?」
「えーうーん…」
パーティーの前に聞かれていたら、きっと教えていた。

「…LIMEで話すことないと思う…」
「えー深山さんがかわいそうじゃん!」

(もーーー!さっきからー!!)

———ドンッ!

水惟が持っていたモヒートのグラスをテーブルに力強く置いた。

「うるさいのはメーちゃんの方でしょっ!!」

ドスの聞いたような声を出すが、水惟なのであまり怖くはない。

「え?水惟?目が据わってる…」

「さっきから深山さん深山さんって!フラれたって言ってるのに!」

「水惟?」
「あ!ちょっとこの子、私たちのお酒まで飲んじゃってるわ…」

「失恋して悲しいのに…ひどいよぉ…」
今度はメソメソと泣き出した。

「わ〜もう水惟ー!ごめんて!泣かないでよ。」
「…違うわよメー子、そういえば水惟ってたまにこうなってたわ。お酒飲みすぎたら泣いたり笑ったり怒ったり…」

冴子が昔を思い出して言うと、芽衣子も何かを思い出した。

「あ、それで最後は…」


10分後
「水惟?おーい…水惟ー?」
「…どうする?これ…」

水惟はテーブルに突っ伏して熟睡していた。