祝賀パーティーが始まり、水惟は洸と啓介にトークを任せるかたちで主催者や重要なクライアントたちに挨拶をして回った。

(こういう場はやっぱり苦手…)

「お、蒼士!」
洸の発した名前に水惟はドキッとする。

「じゃなかった。深山部長だよな、こういうときは。」
「蒼士でいいですよ。俺だって生川社長なんて呼びたくないし。」

普段からスーツ姿の蒼士だが、パーティーでは普段よりスーツの生地やネクタイが華やかなフォーマルスーツを着ていて、スラッとしたスタイルも相まって一際目を引く。
水惟も思わず見惚れてしまっていた。

「水惟のスピーチ、すごく良かったね。受賞おめでとう。」
蒼士に声をかけられてハッと意識が戻る。

「う、うん…なんとかなって良かったです…。ありがとう…ございます。」

水惟の態度にツンとしたところが無くなったのは、洸にも啓介にもすぐにバレてしまうくらいわかりやすい変化だった。

「水惟、スピーチの原稿持っていかないとか意地張って、結局飛んじゃったんスよ。」
啓介が言った。
「よ、余計なこと言わないでよー!」


「…あ、見て、深山さんと…」
「…えー?別れてるって聞いたけど…」


また、水惟と蒼士のことを噂しているような声が水惟の耳に入ってきた。

(………)