「水惟、栄養失調と貧血で倒れたんだよ。」
「………」

「冴子さんからも聞いた。最近一緒にご飯に行っても、水惟はサラダとかデザートだけでまともに食べてないって。」
蒼士に質問されると、水惟は困ったように顔を歪めた。

「…おやつ、とか…仕事中とか夜とか…食べちゃうし、い、家ではちゃんと食べてるから…昼はダイエットで—」

蒼士は掛け布団の上に出ていた水惟の右手を握った。
「そんな嘘、つかなくていいよ。腕がこんなに細くなってる…家でも一人の時は食べてなかったんじゃないか?」

「…え、と…」
「ごめん水惟…気づいてやれなくて。」
蒼士は辛そうな表情(かお)で水惟に謝罪した。

「ちがうよ…ちゃんと食べてるし…」
水惟はなおも否定しようとする。

「ごめん、水惟…」

「………」

「…ごめん…」

蒼士は水惟の手を両手で包むように握りしめると、額に当てるように俯き、懺悔するようにまた謝罪した。
水惟の目から涙が静かに線を描くように溢れた。
水惟は何も言わずに俯く蒼士をみつめていた。