水惟の苦手な会食やパーティーに連れ出し、水惟にとっては初対面の人間と話す機会が多い。
仕事でもデザインした物よりも深山の名前で水惟自身が、それもごく表面的な部分が注目されるようになってしまった。

「最近、水惟が心から笑ってるような笑顔って見てないかもしれない…」
蒼士は零すようにつぶやいた。

「つーか、蒼士っていつ連絡しても海外だ九州だ北海道だ…っていつ水惟に会ってんだって感じだけどな。」
「だから最近は出張の予定も減らしたんだけど…」
寧ろそれが水惟に気を遣わせてしまっているような気さえする。

蒼士は小さく悩ましげな溜息を()いた。

「氷見ちゃんの言う通り、しばらく仕事休ませるってのもアリだと思うぞ?」
洸の言葉に蒼士は頷いた。

「でも、今の水惟に仕事休めって言うのは…傷つけそうで正直怖い…」
怯えたような水惟の目を思い浮かべた。


蒼士から伝えるまでもなく、水惟が休職することになったのはそれから数日後のことだった。