「水惟、気にすることないからね。」
ミーティングの後で氷見に声をかけられた水惟は、つい周りの目を気にしてしまう。

「…ありがとうございます。」
近くに誰もいないことを確認して、お礼を言った。

氷見から見た水惟はだんだんと自信のないおどおどとした態度になっていっているようだった。
それでも水惟は、輝星堂のコンペを楽しみにしていた。


コンペに参加するにはコンペまでの3週間で企画を練り、プレゼンシートを作らなければならない。


「深山さーん、この案件のラフできてます?」
「あ、はい!PDFはメールで送ったので、出力しますね。」
「これ、次の提出もスケジュールタイトなんで、そのつもりでお願いします。」

「深山さん、これの修正至急お願いします!」
「了解です。」

「水惟、この件どうなってる?」
「えっと、今先方の回答待ちです。」
「じゃあ回答あり次第教えてくれる?」


水惟は相変わらず細かい案件を引き受け続けていた。

バタバタとした業務の合間に企画の構想をあれこれと考えてはボツにし、徐々に形にしていった。