「一応、深山くんにも相談しようと思ってるけど…」
「やめてください…今仕事が忙しいみたいなので余計なことで心配させたくないし、本当に特別扱いされてるみたいで嫌なので。」
「でも」
「自分のことは自分でなんとかします。」

それから水惟は、予算の少ない細々とした案件を積極的に受けるようになり、部署で一番残業をするようになった。
それは氷見から贔屓されているという印象を無くすためだった。


「ただいま。」
蒼士が帰宅した。

「おかえりなさい。私もついさっき帰ってきたところなの。すぐにご飯作るね。」
「え、大変だろ?デリバリーにする?」

「ううん!材料買って来ちゃったから。」
水惟はスーパーの袋から材料を取り出して言った。

「残業だって言ってくれたら外で待ち合わせても良かったのに。」
「えーっと…うん、そうだね。次は連絡する。」

そう言いながらも、水惟は蒼士に残業の連絡をするつもりは無い。
家事も仕事も手を抜かずにやるべきだと考えていた。
といっても蒼士は相変わらず出張続きで、その隙間を埋めるように会食やパーティーの予定が入っていたため、料理をする機会はそれほど多くはなかった。