(…焦った顔ぉ…?冴子さん、わかってないなぁ…)

三人の騒がしい会話が耳に入り、水惟は夢うつつで考えていた。

(蒼士の一番良い表情(かお)は—)



「水惟、起きて」
蒼士が呼びかけながらテーブルに伏せた水惟の肩のあたりをトントンと叩く。

「水惟」

「起きないですね。」
「やっぱり深山くん家じゃない?」

「水惟」
蒼士は冴子を無視して続けた。

「水—」
「ん…」
水惟が声を漏らすと同時に、身体が微かにピクッと反応した。

「水惟、起きて」
「んー…」


(この声知ってる…誰だっけ…落ち着いた、安心するような声…)
水惟の意識ははっきりしない。

(うーん…なんだっけ?私、何してたんだっけ…)


「水惟」

(あれ、この声…)

「水惟、起—」
蒼士の呼びかけに水惟が薄く目を開け、上半身を少しだけ起き上がらせると、蒼士の方を見た。


「ん…蒼士…?…ど して…?」


「え………」
寝ぼけた水惟の言葉に、蒼士は一瞬固まった。

「んー…」
一瞬起きた水惟だったが、眠そうに眉間にシワを寄せるとまた寝てしまった。

蒼士の水惟を起こそうとする手と声は止まってしまった。


「ごめん…やっぱ俺ん家に連れて帰る。」