【コンテスト作品】初めての恋の相手はファーストキスを奪った御曹司でした。



「気をつけてな。ひったくりには気をつけろよ」

「おいおい、年寄り扱いするな」

「年寄りだろ」

 うちの親父の店を、俺はいずれは継がなければならない。この洋菓子店を継いで、また残していかなかればならない。
 それが俺の将来になる、多分。誰と生きるのかは別として、誰と生きたいかではあるけど。

「久遠」

「なんだよ」

「幸せになれよ、絶対に」

 親父の言葉に、俺は「……なんだよ、いきなりだな」と言ったが、幸せとはなんなのか考えさせられる。
 幸せは色々あって、たくさんの幸せがあって、それぞれの生き方で幸せがあるだろうけど。

「今度紹介しろよ、恋人出来たら」

「……紹介って、気が早いだろ」

「そうか? あ、じゃあ俺は店出ないとだから、気をつけて行けよ」

 父親は店に出るため厨房を出てしまった。

「……紹介か」

 俺はいずれ、奏音を父親に紹介しないとならないのか。……ま、奏音は拒絶しそうだけどな。

「よし、行くか」

 試作のケーキを箱に詰めて、奏音の元へと向かうために車を走らせた。
 約束の時間の五分ほど前に駐車場に着いた俺は、車を降りて奏音のことを待つことにした。

「お、奏音?」

「……あ、百合原さん」