【コンテスト作品】初めての恋の相手はファーストキスを奪った御曹司でした。



「手、繋いでやろうか?」
 
 俺がそう聞くと、奏音は「い、い、いいですっ!」と全力で拒否する。
 
「でも付き合うって、そういうことだろ?」

「わ、私はそういうの、しなくていいです!」

 すごい全力で拒否してくるな、奏音は。そんなに俺と手を繋ぐのがイヤだというのか。

「へえ?キスはしたのに?」

「っ……!」

 奏音はその言葉を聞いて顔を真っ赤にする。

「あ、あ、あれは!百合原さんが、勝手にしてきたんです!」

「そんなにムキにならなくてもいいのに」  

「む、ムキになんて、なってませんっ」

 なんなんだろう、奏音は。とても一つ一つの反応が面白いし、可愛い。
 こんな恋愛未経験の女子に俺が翻弄される日が来るなんて……。

「奏音」

「は……はい?」

 俺は奏音の手を取ると、「キスするけど、いい?」と思わず聞いてしまう。

「えっ。それはイヤです!」  

「マジか」

 まさか断るなんて思ってなかった。……まあ、そういうこともあるか。
 なんせ、奏音は恋愛未経験女子だ。こうなることも想定しないとな。

「じゃあ、抱きしめていい?」

「えっ……まあ、抱きしめる、だけなら」

 キスはダメだけど、抱きしめるならいいってか。