【コンテスト作品】初めての恋の相手はファーストキスを奪った御曹司でした。



「ちょうどピクニックに行こうと思っていたので」

「奏音、怒ってる?」

「……怒ってません」

 奏音はツンツンしているせいか、怒ってるようにも見えるが、そうではないらしい。

「あの……ピクニック、イヤでしたか?」

 俺はその顔に、ドキっとした。 
 
「……いや、別に」
  
 あれ、奏音てこんな顔もするんだ。 なんとなく、可愛らしいなと思った。
 
「イヤならイヤだと、言ってもらえると助かります」

「イヤじゃないよ。 奏音と一緒なら、俺はどこでもいい」

「……そ、そうですか」

 でもそれは事実。本気の恋を始めないかと奏音に言ったのは、俺だ。
 だから俺は、奏音と本気の恋をするために頑張らないとイケない。

「あ、あの……百合原、さん」

「ん?」

 奏音は俺と少しだけ距離を縮めると、「あの……その、デートって……何をするのでしょうか」と恥ずかしそうに聞いてくる。

「何をするって……そうだな。一緒にご飯食べて、手を繋いで歩いたりするとかだろ」

「て、て、手を繋ぐ……?」

 手を繋ぐというワードだけで恥ずかしがりすぎだろうとも思うが、奏音の反応は一つ一つ新鮮でなんか可愛い。
 これが恋愛未経験女子というものなのか。