【コンテスト作品】初めての恋の相手はファーストキスを奪った御曹司でした。



 奏音のその俺を見る目は明らかに引いていたが、俺もどうしても奏音のことを手に入れたかった。
 こんなに素直に面白いと思う女は、奏音が初めてだったから。
 奏音には好きになってもらえるとは思ってはない。でもやっぱり、俺は奏音に本気の恋というものを教えてあげたい。
 
 そしてあわよくば、俺のことを好きになってもらえたら嬉しいなとは思う。 奏音となら、いい恋愛が出来そうだと思ってるから。
 俺も本気の恋というものを、学びたい。奏音という存在が、俺にそう思わせてくれたから。
 本当に奏音はとんでもない女だなと、つくづく思う。
 
「奏音、こっちおいで」  

「え、イヤです!」
 
 俺の隣を歩くことすら、拒絶されるとは……。

「隣歩かないと奏音のこと守れないだろ」

「守ってもらわなくても結構です」

 こうしてツンツンしている奏音ではあるが、なんとなく俺のことを受け入れているような気がしている。

「それにしても、なんでせっかくのデートがピクニックなんだよ」

 十月の第二週目の週末、奏音にデートしようと誘ったら、奏音はなぜかデートにピクニックをしたいと言い出した。
 デートといえば普通は映画とか、ショッピングとかだろうに。