本当にそうなのだろうかと思う私は、恋をするということに抵抗が生まれている。
「……奏音、恋愛、解禁してみないか。 すぐに俺のことを好きになってくれとは言わないし、嫌いなら嫌いなままでも構わない。 ただ、俺は奏音と本気の恋がしたくなった」
そんなことを言われてしまったら、私は……。
「奏音となら、本気の恋が出来そうな気がするんだよね、俺」
「本気の恋って……なんですか」
その本気の恋とやらを、なぜかもう一人の私が知りたくなってしまう。
「その人が好きで、愛おしくて愛おしくて、たまらないことだよ」
「愛おしくて愛おしくて、たまらないこと……」
愛おしいって、何なのだろう。 愛おしいって、どういう感情なのだろう。
「そう。その愛おしいが分かった時、きっと奏音は恋を知るはず」
百合原さんに見つめられると、なぜか心がザワザワした。
「俺は奏音と、本気の恋がしたい。 だから、俺に奏音の初恋をくれないか?」
「……初恋がほしいとか、変わってますね」
よく分からない変態な人だと思っているのに、なぜか心の扉がグイグイと開かれていくのが分かる。
私の心の扉をこじ開けてくるその男は、私のファーストキスを奪った最低な男なのに。



