百合原さんを睨みつけると、「俺と奏音の初めての恋物語、いいね。しびれる」と笑われた。
「勝手に恋物語、作らないでもらえませんか」
「面白そうじゃん、俺たちの恋物語。いつかドラマになったりしてな」
再び笑われた私は、「そういう妄想はやめてください。気持ち悪いです」と突き返した。
「恋はいいよ、奏音。奏音だってきっと、俺のこの魅力にどっぷりハマるはずだよ」
「……そういうことをよく真面目な顔して言えますね。恥ずかしくないんですか」
百合原さんに視線を向けると、百合原さんは「俺に恥ずかしさなんて一ミリもない。恥ずかしいことなんて何一つないからね」とドヤ顔を見せられた。
「あ、そうですか」
ダメだ、私はこの人との会話に疲れる。
「奏音の恥ずかしいと思うこと、俺は全て受け入れる予定だから」
「ちょっと、なに言ってるんですか。勝手に物語作らないでください」
この人のペースに巻き込まれていく私が、どんどんダメになりそうな気がしてならない。
「奏音、俺との恋はきっと楽しいことだらけだよ」
「……本当に気持ち悪いのでやめてもらえますか。自画自賛してるみたいで無理なんですけど」
恋はきっと楽しいだなんて、本当なのだろうか。



