あの時、私と青野は、今来ている“公園”で遊んでいた———————。
「ねぇ、だるまさんがころんだしよーよ!」
あの日私は、青野......いや、りょーくんにそう言った。
「えぇーっ?二人じゃできないよ」
りょーくんはそう言って困った顔をする。
早くりょーくんと遊びたいけど、なにをしようか思いつかないなぁ...。そう思いながら、
「んー、じゃあ何する?」
ときいてみる。
「んっとね、鬼ごっこする?」
「それも二人じゃつまんないよぉ」
二人で何を遊ぼうかと考えること、3分ほど。
「お兄ちゃんにきいてみる!」
りょーくんはすっくと立ち上がって、家の方へ走り出す。この公園は、私たち二人の家と近い。そして、りょーくんには、八歳年上のお兄ちゃんがいるのだ。
「待ってよ〜っ」
私は先を行く、りょーくんの後を追いかけた。公園を出てすぐのところに、大きな道路があってたくさんの車が行き来していた。りょーくんはそこで信号を待っていた。
「りょーくん、速いよぉ!」
そう言いながら、りょーくんの少し後ろで止まる。
その時、
「あっ!」
私たちは、横断歩道の反対側にりょーくんのお兄ちゃんを見つけた。多分、私立の中学校からの帰り。りょーくんのお兄ちゃんはとても頭が良かったのだ。
「おにいちゃーんっ!」
りょーくんは、目をキラキラさせながら手を振る。すると、りょーくんのお兄ちゃんは、切羽詰まったように何かを言って、そして赤信号なのにこっちに走ってきた。
「おにいちゃ.......?うわぁっ!」
りょーくんは私の横に突き飛ばされた。
......りょーくんのお兄ちゃん、“直人くん”は亡くなった。
両親から、神妙な顔でそう言われた時は、胸が張り裂けそうだった。直人くんは、いつも、ニコニコしてて、私とりょーくんの遊び相手もしてくれた。私たちが喧嘩した時は、「どうしたの?仲直りしないの?」と、仲を取り持ってくれた。
そんな、誰よりも優しくて、冷静で、大切な直人くんが、亡くなった....?胸の中から何かがボロボロと欠けていくような気がして、とても怖くなる。そんな消失感を紛らわすように、
「な、なんで....?」
とお母さんに聞いてみる。
すると、お母さんはハンカチで流れ落ちた涙を拭きながら、
「交通事故なの。.....車にひかれて....ッ」
すごく苦しそうに話すお母さんと、顔を歪めているお父さんを見て、直人くんの死をより深く感じる。
「そっか...」
居ても立っても居られなくて、玄関にパッと駆け出す。
「りさ!」
お父さんが後ろから呼んでいたけれど、振り返らなかった。
......りょーくんに会いたかった。
この悲しみと寂しさをどうすればいいのか、わからなかったから。りょーくんなら、笑って、
「大丈夫だよ」って言ってくれると思っていたから。.......りょーくんは、強いから。
でも、りょーくんは、その日、笑ってくれなかった。
「ねぇ、だるまさんがころんだしよーよ!」
あの日私は、青野......いや、りょーくんにそう言った。
「えぇーっ?二人じゃできないよ」
りょーくんはそう言って困った顔をする。
早くりょーくんと遊びたいけど、なにをしようか思いつかないなぁ...。そう思いながら、
「んー、じゃあ何する?」
ときいてみる。
「んっとね、鬼ごっこする?」
「それも二人じゃつまんないよぉ」
二人で何を遊ぼうかと考えること、3分ほど。
「お兄ちゃんにきいてみる!」
りょーくんはすっくと立ち上がって、家の方へ走り出す。この公園は、私たち二人の家と近い。そして、りょーくんには、八歳年上のお兄ちゃんがいるのだ。
「待ってよ〜っ」
私は先を行く、りょーくんの後を追いかけた。公園を出てすぐのところに、大きな道路があってたくさんの車が行き来していた。りょーくんはそこで信号を待っていた。
「りょーくん、速いよぉ!」
そう言いながら、りょーくんの少し後ろで止まる。
その時、
「あっ!」
私たちは、横断歩道の反対側にりょーくんのお兄ちゃんを見つけた。多分、私立の中学校からの帰り。りょーくんのお兄ちゃんはとても頭が良かったのだ。
「おにいちゃーんっ!」
りょーくんは、目をキラキラさせながら手を振る。すると、りょーくんのお兄ちゃんは、切羽詰まったように何かを言って、そして赤信号なのにこっちに走ってきた。
「おにいちゃ.......?うわぁっ!」
りょーくんは私の横に突き飛ばされた。
......りょーくんのお兄ちゃん、“直人くん”は亡くなった。
両親から、神妙な顔でそう言われた時は、胸が張り裂けそうだった。直人くんは、いつも、ニコニコしてて、私とりょーくんの遊び相手もしてくれた。私たちが喧嘩した時は、「どうしたの?仲直りしないの?」と、仲を取り持ってくれた。
そんな、誰よりも優しくて、冷静で、大切な直人くんが、亡くなった....?胸の中から何かがボロボロと欠けていくような気がして、とても怖くなる。そんな消失感を紛らわすように、
「な、なんで....?」
とお母さんに聞いてみる。
すると、お母さんはハンカチで流れ落ちた涙を拭きながら、
「交通事故なの。.....車にひかれて....ッ」
すごく苦しそうに話すお母さんと、顔を歪めているお父さんを見て、直人くんの死をより深く感じる。
「そっか...」
居ても立っても居られなくて、玄関にパッと駆け出す。
「りさ!」
お父さんが後ろから呼んでいたけれど、振り返らなかった。
......りょーくんに会いたかった。
この悲しみと寂しさをどうすればいいのか、わからなかったから。りょーくんなら、笑って、
「大丈夫だよ」って言ってくれると思っていたから。.......りょーくんは、強いから。
でも、りょーくんは、その日、笑ってくれなかった。

