「正直なのはいいことだよ」


 咲楽はいつだって、そう言ってくれた。


 だから私は私をとことん嫌いにならずに済んでいたけど、今回ばかりは自分にそう言い聞かせることができなかった。


「……正直すぎるのはよくないって、夏川先輩に言われたの」


 夏川先輩のあの悲しそうな眼は、しばらく忘れられそうにない。


 私はまた、机に額を当てる。


 こんな後悔をするために、夏川先輩に会いに行ったわけではないのに。


 私はただ、夏川先輩に直接お祝いの言葉を言って、欲しいものを調査したかっただけなのに。


 偶然、夏川先輩が責められている言葉を聞いてしまったから。それが聞き流すことのできないものだったから。


 なんて、言い訳しか出てこない。


 夏川先輩の表情を思い出して、またため息をつく。


「そんなことより、依澄」


 私が悩んでいるのを、そんなこと扱いするなんて酷くないか。


 そう思いながら顔を上げ、顎を机に付ける。


 咲楽は深刻そうな、申しわけなさそうな顔をしている。


「クラスマッチの競技なんだけど、私と依澄、バスケになった」


 私は背筋を伸ばし、数回瞬きをして、咲楽の言葉を反芻する。


 クラスマッチの競技が、バスケ。


「……え?」


 理解して、出てきた言葉はそれだけだった。