君の世界に触れさせて

「久々に部活中の様子を撮らせてほしいなと思ってさ」


 僕が帰りたいと思っていることは伝わっているはずなのに、佐伯は勝手にそう言った。


 すると、何人かが鋭い視線を向けてきた。


 ここにも、あの噂を信じたままの人がいるらしい。


 なんて居心地が悪いんだろう。


「もちろん、好きに撮っていいよ」


 意外にも、七瀬さんはそう言った。


 あまりにも明るく言うから、僕のほうが戸惑ってしまう。


「いいの……?」
「うん。夏川君が撮ってくれる写真はどれも、みんな楽しそうに部活してるのが伝わってきて、それを見て私も頑張るぞ!って気持ちになってたんだ。またいっぱい撮って、私にやる気をわけてくれると嬉しい」


 七瀬さんの笑顔は、嘘偽りのない笑顔に見えた。


 そんなふうに思ってくれている人がいたなんて、知らなかった。


 嬉しくて、目頭が熱くなる。


「……私は、イヤ」


 歓迎ムードが作られてしまったがゆえに、遠慮気味にそんな声が上がった。


 同じクラスの篠崎さんが、七瀬さんとは真逆の雰囲気を醸し出している。


 七瀬さんは篠崎さんの様子が気になったのか、中に入って近くに行った。