君の世界に触れさせて

 やってみたいと思うけど、どうしても、みんなの僕に向ける視線が頭をよぎって、頷けなかった。


「なあ栄治、やりたくないわけじゃないんだよな?」


 すると、横で聞いていた佐伯に確認され、僕は曖昧に頷く。


「じゃあ、噂を撤回していこうぜ。みんなの誤解が解けたら、元通りじゃん。ほら、カメラ持って」


 佐伯は無茶苦茶な理論を並べて、僕にカメラを持たせると、僕の腕を引っ張った。


 視界の端に見えた矢崎先生に小さく手を振られ、僕は抵抗するのを諦め、大人しく佐伯について行くことにした。


 ある程度進むと、佐伯は僕が逃げないと判断したようで、手を離した。


 廊下を歩いていると、あちこちから部活に勤しむみんなの声や音が聞こえてくる。


 もう、あのときみたいに疎外感を抱く必要はないのだろうか。


 そう思うと、一度だけ立ち止まってその音に浸りたくなるけど、佐伯が先に進むせいで、できなかった。


 若干置いていかれてしまい、小走りでその差を縮める。


「噂を撤回って、どこに行くつもりなんだよ」


 僕が聞くと、得意げな笑みが返ってきた。


「他所の部活に決まってるだろ。前みたいに、写真を撮らせてもらうんだ」


 それはつまり、荒療治というものだろう。