僕にしては珍しい強い言葉に、高宮は戸惑いを見せる。


「……冗談じゃん」
「冗談ならなにを言っても許されるわけじゃないからな」


 佐伯も同じように、高宮に敵意を向ける。


 高宮は舌打ちをして、僕たちから離れていく。


「まだあんなふうに言う奴がいるんだな」


 佐伯が呆れた声で言うのを聞きながら、席に着く。


「仕方ないよ。噂、かなり広まってたし」


 僕よりも佐伯のほうが怒っているように見えて、改めていい友達を持ったと思った。


「そんなことより、栄治。今日の放課後、暇?」
「特別予定はないけど」


 佐伯のにやけ面を見ると、前言撤回したくなる。


 またよからぬことを企んでいそうだと思いながら、ホームルームの始まりを告げるチャイムを聞いた。





 放課後、僕は佐伯に連れられて、写真部の部室の前にいた。


 予想外のようで予想通りの場所に、少しだけ足がすくむ。


 カメラから離れてしまったことで、訪れなくなった場所。


 どんな顔をして入ればいいのか、わからない。


「こんにちは」


 佐伯は戸惑う僕など無視して、容赦なくドアを開けた。


 立ち止まっておくこともできず、恐る恐る中に入った。