僕にとって望まない光景が、そこにはあった。


「それからはカメラを見るとハル兄のことを思い出して、写真を撮るのが……カメラを触るのが、怖くなった」


 ハル兄がまた、申しわけなさそうにしているのを見ると、僕だってそう感じてしまう。


 一応話が終わって、また静寂の時間に戻る。


「……なるほどな」


 ハル兄はそう言って、身体を伸ばした。


「それで、写真を撮りたいと思ったから、か」


 ハル兄は納得しているみたいだけど、僕の言いたいことがきちんと伝わったのか、若干の不安があった。


 ここまでの流れからして、『僕が古賀が好きで、古賀を写真に収めたくて、でも今のままだとカメラに触れられないから、トラウマを克服した』と捉えられていそうだったから。


 ハル兄の表情的にも、そう考えている可能性は高い。


 だけど、また恋愛話に繋がってしまうため、確認をする勇気がなかった。


「花奈が喜びそうだな。栄治の写真、好きだから」


 ハル兄は嫉妬の混ざった視線を向けてくる。


 花奈さんが好きなのは、僕が撮った“ハル兄”の写真なのだけど、それは言わない約束だ。


 だから僕は、笑って流した。