咲楽はヘアアイロンを使って、私の髪を整えていく。


 ショートカットだから、大きな変化はない。


 でも、好きに跳ねていた毛先がまとまっていると、いつもと違って見える。


「よし、可愛い」


 もう終わったらしく、咲楽は片付け始める。


「頑張れ」


 咲楽に軽く両肩を叩かれて、気合いが入る。


 改めて、自分は幸せ者だと感じながら、咲楽と学校に向かった。


 いつもより咲楽のオシャレ論に耳を傾けながら、通学路を進んでいく。


 私がちゃんと相槌を打つからか、咲楽は楽しそうだ。


「夏川センパイ、おはようございます」


 校門が近くなってから、可愛らしくて明るい声が聞こえてきた。


 名前に反応して、夏川先輩の姿を探す。


 すぐに見つかったのはいいけど、その傍に可愛い子がいて、胸が苦しくなる。


「アイツ……諦め悪い」


 咲楽の声のトーンが、一気に暗くなる。


 あの子が、昨日咲楽が言っていた子だろうか。


 私よりも上手で自然なメイクに、可愛い髪型。

 雰囲気も柔らかくて、女の子らしい。


 あんなにも可愛い子に勝てる気がしなくて、勇気がしぼんでいく音がした。