ただ、これはどう反応すればいいのかわからない。


「役に立てなくてごめんね、依澄ちゃん」
「いえ、そんなことは」


 柚木先輩は優しく、かつ楽しそうに微笑んでいて、私は言葉を切った。


 そんな視線を向けられる理由がわかるからこそ、急に照れくさくなる。


「ねえ、依澄ちゃんはメイクとかしないの?」
「ダメだよ、花奈さん。依澄はオシャレには興味持ってくれないから」


 私ではなく、咲楽がつまらなさそうに言った。


「そう? 私はそうは思わないけどなあ」


 その視線から“夏川先輩に可愛いと思われたくない?”と言われているような気がする。


 ここまでお見通しなら、隠すだけ無駄だろう。


「……少しだけ、興味あります」


 咲楽は驚きを隠さなかった。


 そして、口を尖らせた。


「夏川栄治のせいで、依澄がどんどん変わってく」
「栄治くんのおかげ、じゃなくて?」


 柚木先輩に言われて、咲楽はますます不機嫌になる。


 そんな咲楽の頭を、柚木先輩は撫でた。


「咲楽ちゃんは寂しいんだね」


 咲楽は不貞腐れたまま、りんごジュースに刺さったストローを咥える。


 飲まずに、息を吹き出したことで、コップの底から泡が上がってくる。