「夏川君が来るようになったのに、古賀さん、来ませんね」


 部活に参加するようになってから数日が経ち、部室でカメラの準備をしていると、矢崎先生がふと思い出したように言った。


 それは僕も気にしていたことだから、あまり触れてほしくなかった。


 写真部どころか、古賀が放課後に僕のところに来る機会すら、減っていたから。


「夏川に興味がなくなったんじゃない?」


 香田部長は、容赦なかった。


 古賀は自分の言葉にトゲがあって、他人を傷つけてしまうと悩んでいたみたいだけど、僕からしてみれば、氷野や香田部長のほうが、トゲがあると思う。


 香田先輩は純粋に言っているから、余計にタチが悪い。


「古賀ちゃんが栄治の写真に興味なくなるとか、絶対ありえないですよ」


 確証もないのに、佐伯は言い切った。


「そうなの?」
「あんなにもまっすぐに、好きだって伝えて来た人が、そう簡単に心変わりはしないと思うんで」


 佐伯が反論して、僕は古賀の話を思い出した。


 古賀にとって、僕の写真はそう簡単に、どうでもよくなるものではないだろう。


 ただ、古賀が僕に興味あるかどうかは、きっと別の話だ。


 僕の過去を聞いて、嫌気がさした可能性だってある。


 思っていることをはっきり言えない姿がかっこ悪いとか。現実と向き合えないような臆病者だとか。