先輩の正直な言葉に、胸が痛くなる。


 つくづく、先輩の言葉の通り、正直すぎるのはよくないと思い知らされる。


 それすらわかっていなかった自分が、嫌いになる。


「でもね」


 先輩のはっきりとした声に、思わず顔を上げる。


 先輩はまっすぐに私を見ていた。


「古賀に何度も僕の写真を認められて、僕は嬉しかったんだ」


 先輩の表情は穏やかで、そのおかげなのか、先輩の言葉はすんなりと私の心に入ってくる。


「古賀の言葉、行動のおかげで、僕はもう一度、写真を撮りたいって思った」


 先輩は視線を外さないで、一生懸命に伝えてくれる。


 こんなふうに私の嫌いなところが認められて、否定する心と、喜ぶ心が葛藤をした。


 その複雑な表情を読み取られたくなくて、私は少しだけ俯いた。


「古賀、ありがとう」


 先輩の感謝の言葉は、私の葛藤を吹き飛ばした気がした。


『……ありがとう、古賀』


 夏川先輩は、海でもそう言っていた。


 今なら、どうして先輩がお礼を言ってきたのか、ちゃんとわかる。


 私の素直な言葉が、誰かを傷つけるだけのものではなかったのだと思うと、不思議と涙がこぼれた。