バタンと扉の閉まる音がした。背中を向けてリビングへ戻ろうとしたら、ガチャットいう音と共に、腕を後ろに引かれた。

 あのイランイランの香りに抱き込まれた。

「充電を忘れた。危ないところだった。じゃあね、行ってきます」

「……は、はい」

 彼は私の頭にキスをひとつ落とすと消えた。何なの、もう……。ここに来てから、ことある毎に充電させてと言う。

「君の気配というか、僕の中に君の香りが消えると僕はピコン、ピコン、とランプがついてね、早く君を充電しろと身体が言うんだよ」

「……何、子供みたいな嘘言ってるんです?」

「あ、何その目?嘘じゃないよ、本当だから。君がここへ来てから、部屋に君の香りがするようになった。ラベンダーとオレンジの香り。僕はもう、絶対一人では暮らせない」

「はいはい、わかりました。これでいいですか?」