「ユウくん走らないで! アユちゃん、先生と手をつないでね」
園庭ではしゃぐ子どもたちとともに千明は汗をかいて駆け回っていた。
5歳クラスの子どもたちはみんなパワフルでついていくのがやっとだ。

「千明せんせぇ、こっち!」
「はやくはやくぅ!」
アユちゃんにグイグイと引っ張られておままごと遊びをしている女の子たちの輪の中に入っていく。

中には一緒に遊んでいる男の子の姿もあって、最近では誰がどんな遊びに夢中になっても咎められることはない。
「千明せんせぇは、帰ってきたお父さん役ね?」

「先生、お父さん役なの?」
千明は自分で自分を指差してそう聞き、すぐにまぁいっかと思い直す。

「ただいまぁ、今帰ったよ。はぁ、仕事疲れたなぁ」
千明の演技に合わせてユウくんが「おかえりなさい、あなたぁ」と、返事をする。

その声がやけに女性っぽくて驚いてしまう。
普段から大人たちをよく観察しているんだろう。

「お父さんお帰りなさぁい」
アユちゃんは娘役みたいだ。