(もういいかな。お兄様たちも戻ってくる気配がないし、伯父様たちの散財で領地の経営状況も改善しない。クレバリー侯爵家には見切りをつけた方がいいかもしれない)

 ひとり残されてから、アマリリスはどうにかできないかと必死に努力してきた。
 別に侯爵家にこだわりがあるわけではない。ただ両親と兄たちが大切にしていたから、アマリリスも大切にしたかっただけだ。

 だから伯父一家がきちんとクレバリー侯爵家を盛り立ててくれるなら、それでもよかった。そうでない場合は爵位を取り戻し、兄たちを迎えにいこうとも考えたが肝心の兄たちとは音信不通だ。

 爵位を取り戻すだけなら今のアマリリスだけでもどうにかなるが、女児は家督を継げない。婚約者のダーレンが信頼できればさっさと結婚して奪い返せばいいが、従妹であるロベリアに夢中になっている。

(それなら、今、私がやるべきことは——)

 アマリリスは泥舟から逃げ出すべく、思考を巡らせた。