三学期が始まる初日。の、朝。

今日はまた、一段と冷えるな。
 
大晦日の日ほどではないが…。それでもやっぱり、寒いものは寒い。

天気予報によると、昼過ぎ頃から雪がちらつく、とのこと。

そんな日が新学期初日なんて、全くツイでない。 
 
でも、そんな不毛なこと愚痴ってても仕方ないから。

今学期も今朝から、いつもの習慣、毎朝の弁当作りを再開した。

今日のお弁当のおかずは、正月の間に余ったお餅を豚肉で巻いて甘辛く味付けした、お餅アレンジレシピである。
 
いつもいつもお雑煮、お汁粉だけじゃあ飽きるだろ?

たまにはしょっぱい味付けで。趣向を変えてな。

…ところで。

「…起きてこねぇな、あの人…」

お弁当も作ったし、朝ご飯の支度も終わったのに。

寿々花さんが、一向に起きてこない。

そろそろ朝飯食べ始めないと、遅刻するんだけど?
 
まーたあの人と来たら、新学期が始まるっていうのに、眠りこけてるんだろ。

俺は当然、新学期から遅刻なんてしたくないし。

寿々花さんも、新学期早々遅刻登校…は、さすがに可哀想だし。

…仕方ない。起こしに行くか。

全く。今度寿々花さんにプレゼントを渡す時は、目覚まし時計にしよう。

爆音で起こしてくれる目覚まし時計を所望する。

寿々花さんの寝室に行こうと、立ち上がったその時。

「ふぇー。悠理君、おはよー」

「あ、起きてきた…」

起こしに行こうと思ったら。その必要はなかったようだ。

「おはよう。…起きてこないから、丁度今、起こしに行こうかと思ってたところだよ」

「えっ。起こしに来てくれようとしてたの?」

え?うん。

何でそんなびっくりすんの?

「…勿体無いことしちゃった…。もう少し寝てれば、悠理君に起こしてもらって…。朝から一番に悠理君の顔を見られて、幸せだったのにー…」

…何言ってんだ?この人。

人に頼るんじゃねぇ。自分で起きろ。

何でちょっと残念そうなんだよ。意味不明。

…それよりも。

「何でまだその格好なんだよ。着替えてこいって」

「あのね、悠理君。昨日面白い夢を見たんだよー。賢者の石っていう魔法の石を探す為に、赤い魔法陣で作られた不思議な世界で…」

「乙無かよあんたは。良いから着替えてこい」

中二病じみた夢を見てやがる。

って、それは良いから早く支度。

「遅刻するぞ。新学期初日から」

「…ほぇ?」

…ほぇ、じゃなくて。

いつもなら、素直に頷いて「着替えてくるー」と自分の部屋に戻るところなのだが。

今日の寿々花さんは、俺が着替えてこいと言っても、きょとーん、と首を傾げている。

…さては、正月気分が抜けていないな?

「…悠理君。今日は何で制服着てるの?」

首を傾げたまま、寿々花さんが聞いてきた。

やっぱり、今日から新学期だってことを忘れているようだな。

言わんこっちゃない。

「学校だろ。今日から」
 
「ふぇっ?」

「正月休みも冬休みも終わり。今日から通常運転。学校が始まるんだよ」

残念だけどな。

…しかし、寿々花さんにはその自覚は全くないようで。

「…今日?今日なの?学校…悠理君、学校行くの?」

「行くよ。当たり前だろ」 

もしかして寿々花さん、三学期初日からサボるつもりか?

それはさすがにどうかと思うぞ。いくら寒くて外に出たくないとはいえ。