「はー…」

「悠理君、また溜め息ついてる…」

「いや、この溜め息は…」

うんざりした溜め息じゃなくてさ。ホッとした、安堵の溜め息だよ。

雪かきも終わって、雪だるまも作って。

年末にやるべきことが、無事に全部終わった。

年越しそばもちゃんと食べたぞ。

あとは座して時を待ち、年明けを待つだけだ。

「寿々花さん、この後はどうする?」

「ふぇ?」

「いつも通りの時間に寝るか?それとも、年が明けるまで待ってるか?」

年越し番組でも観ながら、ハッピーニューイヤーの瞬間を待つか?

何なら朝まで起きてて、初日の出を拝むか?

「悠理君はどうするの?」

え、俺?

「そうだな…。もうちょっと起きてようかな…」

特に観たい番組がある訳じゃないが。

残り僅かとなった今年の数時間を、もう少し惜しみながら過ごすよ。

「じゃあ、私も起きてる」

「そうか?…無理するなよ」

「うん」

…しかし、こうして一年を振り返ってみると。

波乱万丈の一年だったなぁ…。

色んなことがあった。本当に。色んなことが。

その大半、8割くらいは寿々花さんに起因する。ような気がする。

良かったこともたくさん。大変なこともたくさんあったけど…。

「…まぁ、それなりには、楽しい年だったかな…」

「…」

「寿々花さんは、どうだった?今年はどんな年だっ…」

「…zzz…」

「…寝てるし…」

無理すんなとは言ったけど。まさかこの一瞬で寝落ちするとは。

年末だからって、お子様に夜更かしは無理だったか。

つーか、コタツで寝るなって言っただろ。自分のベッドで寝なさい。

心苦しいけど…。

「寿々花さん、寿々花さん。起きろって」

「むにゃむにゃ…。悠理君、そこはらめ〜…」

「なんつー夢見てんだよ。馬鹿!」

「へぶっ」

ベシッ、と寿々花さんの後頭部をはたくと。

寿々花さんは、ぱち、と目を覚ました。

「起きたか?」

「…悠理君がぶった…」

あぁ?

「悠理君がぶった〜…」

「あー、はいはいごめんな。俺が悪かった」

でも、こんなところで寝るあんたも悪いからな。

「あれ?あれ?もう年明けた?」

「明けてねーよ。まだ12月だ」

「そっかー。さっき夢に悠理君が出てきたから、早速悠理君の初夢を見たのかと思って嬉しかったのに…。まだだったのかー」

残念だったな。

ってか、初夢って、大晦日から元旦にかけてみる夢のことを指すのか?

1月1日の夜に見る夢じゃなくて?

それは地域差ありそう。

良いんだよ何でも。これが初夢だったら良いな、と思ったらそれが初夢だ。

しかし、さすがにまだ早いぞ。

「今年の振り返りでもしようかと思ったら、早々に寝やがって…」

「ふぇ?振り返り?」

「今年はどんな年だった?って」

「どんな?うーん…。悠理君と一緒で楽しかった」

そうかい。

シンプルイズベスト。

「悠理君も楽しかった?」

「うん。まぁ…そうだな」

不思議なもんだよな。

去年の今頃は、来年はどんな年になることか、と考えてはうんざりしていたのに。

「来年の大晦日も、こんな風に過ごせたら良いねー」

「…本当にな」

来年の今頃も、雪だるまでも作りながら、二人でコタツに入って。

また同じように…「来年もこんな風に過ごしたいね」なんて言えてたら良いな。

来年だけじゃなくて、再来年もその先も、ずっと。