いや、そうだけどさ。

確かに、もうすぐハロウィンだけど。

さっき寿々花さんの謎替え歌を聴いて、思い出したよ。

もうすぐハロウィンだな。

道理で、スーパーにやたら大きなかぼちゃが売ってた訳だよ。

こんなでっかいかぼちゃ、どうやって消費すれば良いんだ、と思ったのを覚えている。

…で、それはともかく。

「はろうぃーんにはお菓子食べてー♪悠理君にイタズラしよー♪」

まさかの、替え歌の続き。

おい、やめろって。何しようとしてるんだ。

「はーやく来い来い、はっぴーはろうぃーん♪」

一番、歌い切りやがった。

微妙に字余りって言うか…語呂が悪いけど…。

楽しそうで何より。

ちょっと前まで寿々花さん、毎日、雛堂にもらったゲームで遊んでたんだけどな。

つい先週も、「ぽよぽよ」なるゲームで、「GTR積みで20連鎖しちゃったー」とか言っていた。

全然意味が分からないが、多分寿々花さんのことだから、また偉業を一つ成し遂げたのだろう。知らんけど。

しかし、寿々花さんの欠点と言えば。

ゲームが上手過ぎて、やり込む前にすぐに飽きてしまうことだな。

最近は、もうゲームそのものに飽きてしまったのか。

またしても、以前のようにお絵描きをしたり、おままごとセットで遊ぶようになってしまった。

で、毎回俺が、それに付き合わされている訳だよ。

良いよ?別に。

ゲームに付き合わされても、俺はゲームが下手過ぎて、何をやっても寿々花さんの足を引っ張るだけ。

自分は完璧なプレイしているのに、下手くそな初心者が自分の横で足を引っ張って、そのせいで負けたら。

ゲーマーとしては、多分めちゃくちゃ腹が立つだろう?

俺のせいで寿々花さんまで負けてしまったら、申し訳なくていたたまれないからさ。

俺にはもしかしたら、お絵描きやおままごとの方が向いてるのかもしれない。

…話を戻して。

聞き捨てならないぞ。…さっきの寿々花さんの替え歌。

「…おい、おいこら。寿々花さん」

「もーいくつ寝るとー♪はっぴーはろうぃーん♪」

まさかの2番が始まってしまった。

こら。いつまで歌うんだ、それ。

「はろうぃーんには悠理君が〜♪魔女の服着てごきげんよー♪」

「やめろって、馬鹿。誰がご機嫌だよ!」

「はーやく来い来い、はっぴーはろうぃーん♪」

何もハッピーじゃねぇ。ハッピーなのはあんたの頭の中だろ。

誰が魔女の服なんて着るか。文化祭でのことはもう忘れろ。一生忘れてくれ。

「アホな替え歌を歌ってないで、俺の話を聞け」

「…ほぇ?」

ぐりぐり、とクレヨンを動かしていた寿々花さんが。

ようやく俺の存在に気づいたのか、いつもの間抜け顔で俺を見上げた。

…相変わらず、腰が抜けそうになるほど間抜けな顔だなぁ…。

これが本当に、無月院のお嬢様かよ?全然そんな風に見えんな。