「芙結ー!ふーゆー!」
学校へ行こうと家を出ると、タイミングよく名前を呼ぶ声に、振り向いた。
そこには、明るい茶髪を揺らしながら、手を振って駆け寄ってくる幼なじみの男子。
「待ってよ、芙結。一緒に行こうっていつも言ってんのに」
「高校生になってまで、恥ずかしいよ。瑞貴とは、付き合ってるわけでもないのにさ」
「だから、それもいつも言ってるよ。俺の彼女になってって」
この会話、もう何回目だろう。
幼稚園の頃からだから、多すぎて覚えてない。
そして、私は決められたセリフのように、いつも通りの言葉を口にする。
「ダメだよ、瑞貴とは繋がってないから。赤い糸」
自分の右手の小指を見る。
相変わらず、何も見えない。
私には、運命の相手を見つけあった同士の赤い糸が見えるらしい。
恋人同士だからといって、必ずしもその相手と繋がっているわけじゃない。
だから、本当にたまにしか見えない。
相手を見つければ、きっと自分の糸も見えるようになる。
ママとパパは、五年前に離婚した。
私、楯岡芙結(たておか ふゆ)は、自分の赤い糸を見つけられないまま、高校生一年生になっていた。
学校へ行こうと家を出ると、タイミングよく名前を呼ぶ声に、振り向いた。
そこには、明るい茶髪を揺らしながら、手を振って駆け寄ってくる幼なじみの男子。
「待ってよ、芙結。一緒に行こうっていつも言ってんのに」
「高校生になってまで、恥ずかしいよ。瑞貴とは、付き合ってるわけでもないのにさ」
「だから、それもいつも言ってるよ。俺の彼女になってって」
この会話、もう何回目だろう。
幼稚園の頃からだから、多すぎて覚えてない。
そして、私は決められたセリフのように、いつも通りの言葉を口にする。
「ダメだよ、瑞貴とは繋がってないから。赤い糸」
自分の右手の小指を見る。
相変わらず、何も見えない。
私には、運命の相手を見つけあった同士の赤い糸が見えるらしい。
恋人同士だからといって、必ずしもその相手と繋がっているわけじゃない。
だから、本当にたまにしか見えない。
相手を見つければ、きっと自分の糸も見えるようになる。
ママとパパは、五年前に離婚した。
私、楯岡芙結(たておか ふゆ)は、自分の赤い糸を見つけられないまま、高校生一年生になっていた。