そろそろ15時になる頃。

フォーマルなスーツに着替えた文哉は、そろそろか、と腕時計を確かめてから、ドアをノックして真里亜に声をかけた。

「支度出来たか?」
「あ、はい。出来ました、けど」
「なんだ?けどって」
「いえ、今行きます」

意を決したようにドアを開けて入って来た真里亜を見て、文哉は目を見開く。

(そ、そのドレスは…。あの時、俺の理性を崩壊させた破壊力抜群のドレス)

まるでロボットの戦闘装備のような形容詞が頭に浮かぶ。

ショールを羽織って隠してはいるものの、その下はあのセクシーな装いなのだと考えただけで、文哉は鼓動が速くなる。

(待て、落ち着け。このショールさえあれば大丈夫なんだから)

うん、と己に頷くと、素知らぬフリで出口に向かう。

「じゃあ行こう」
「はい」

歩き始めた文哉は、真里亜をエスコートするのも忘れてギクシャクと不自然に手足を動かす。

エントランスからタクシーに乗り、隣に座る真里亜をチラッと横目で見る。

(うん、大丈夫だ。このショールさえあれば)

何度も同じセリフを頭の中で繰り返していた。