やがて会議が始まり、照明を少し落とした会議室でスクリーンを使いながら、役員達の報告やプレゼンが行われる。

真里亜は副社長の斜め後ろの壁際に立ち、様子をうかがう。

時折、副社長がじっと資料に目を落としたまま何かを考え込むのに気づき、真里亜は自分が持っている資料のその部分に印を付けた。

と同時に、常に時間も気にかけておく。
12時半からの会食の約束に遅れる訳にはいかない。

道路の混雑状況もスマートフォンで確認し、頃合いを見て住谷に目配せする。

住谷は頷いてそっと会議室を出て行った。

会議は終盤だが、最後までいたのでは間に合わない。

「副社長、そろそろ参りましょう」

小声でささやき、退席を促す。

エレベーターでエントランスに下りると、ちょうど住谷が車を回してきたところだった。

運転席から降りた住谷が後部座席のドアを開け、副社長が乗り込むと、真里亜は助手席に座った。

ゆっくりと静かに住谷が車を走らせる。

予定通り、約束の10分前にホテルに到着した。

住谷が開けたドアから副社長が降りると、素早く住谷が菓子折りの紙袋を真里亜に渡し、真里亜は先程の会議で印を付けた資料を住谷に渡す。

そして急いで副社長のあとを追った。