和也が優しいのに変わりはない。
 でも、それは女性みんなに対してなのを私は知っている。

 彼女でいる限り、不安はつきまとう。
 「彼女」だからダメなのだ。「妻」になれば。

 早く結婚して子供を産みたい。
 そうすればきっと和也だって、落ち着いてくれるはず。

 私は相変わらず和也のことで頭がいっぱいだった。
 仕事は腰掛け程度にしか思っていなかったし、特に趣味もなかった。

 ただ、和也のために料理が上手くなりたいと思い、料理教室に通った。

「彩美の料理は最高だよ。彩美はいい妻になりそうだね、俺の」
「和也、それって……」
「結婚して欲しい。俺と」

 和也の手にはダイヤの指輪があった。
 その輝きを私は恍惚とした気持ちで見た。

「和也。嬉しい!」

 私は就職してから三年で結婚退社をして、専業主婦になった。

 だが、ここまでは予測できたことだった。二度目は結婚まではこぎつけていたのだから。問題はここからなのだ。