初春——



すっかりと春の陽気に、

虫たちが顔を覗かせ始めた頃。



雪溶け、春を告げる香りが僕の心をポカポカと気持ちよくさしていた。



今日は部活のない日曜日で、

甥っ子の燈也たちが遊びに来ている。



航兄ちゃんは仕事で、母さんは琴美姉ちゃんを近くの産科医院まで連れて行っていた。



琴美姉ちゃんのお腹もはち切れんばかりに大きくなり、予定日まであともう少し。



僕たちは家族が増えることを何より心待ちにしていた。


待望の女の子ということもあり、

余計に気持ちは高鳴る。



ともあれ、

元気に産まれてきてくれたら、

それだけでいい。



元気な産声を届けてくれるだけで、

生きている喜びを感じとれるから。



航兄ちゃんはいつも以上に、

張り切りながら仕事に向かって行った。



6人家族の大黒柱になるんだから、これからもっと頑張らなきゃダメなんだと自分を奮い立たせて。