人生は虹色〜兄が僕に残した言葉〜

「うん。何があったかは聞かない。とりあえず帰ってあげな!私は言ったからね!」



夏実はそう告げると立ち上がり、

そそくさに帰ろうとするが、

僕は夏実を呼び止めた。



「おい!」



「うん?」



「もしかして、こんなこと言うためにわざわざ?」



夏実のことだから心配になって、

僕を探しに来てくれたんだと思った。



電話にも出ない、

メールも見ない僕に対して、

直接伝えるしか他になかったのだろう。



僕は夏実の優しさに胸を打たれていた。



「違うよ!帰り道こっちだから、じゃあね」



「おい!」



また呼び止める。



夏実も僕のためだとは素直になれなかったのだろう。



誰でも分かるような下手くそな嘘。



夏実の惚けた顔を見ただけで、すぐに分かった。



「だから、何ー?」



「お前、帰り道こっちだろ?」



「え!あ……じゃあ、今日はこっちから帰ろうかな?!そ、そこまで言うんだったら」



明らかに不自然な動きに、可笑しな態度。



僕は自然と笑みが溢れていた。

 

「はは、変なやつ」



少しだけ元気づけてもらった気がして、

大きく手を挙げながら、感謝を伝えた。



ここに居ても、しょうがない。



僕は母さんが待つ家に帰ることにした。