第二章



-新しい景色-







晩冬——



当たり前のようで、当たり前じゃない日常が戻ってきた。



朝起きたら『おはよう』が言えて、ちょっとしたことにでも『ありがとう』と感謝を伝えることができる。



何も知らない亨兄ちゃんから、

『家族の雰囲気、変わった?』

なんて不思議がられた。



航兄ちゃんも僕のことを気にかけてくれてたから、話した時には素直に喜んでくれた。



今までの居心地の悪さなんて忘れるぐらい、家族は格段に明るくなったと思う。



なんで今まで家族と向き合わなかったのだろうか?



今となっては不思議でしょうがない。



学校に行っては、

今田を見る目が変わっていた。



今までは、

担任の先生としか思っていなかった。



だけど今は、心から尊敬できる人。



こうも家族が変われたのも、

今田のおかげだから。



それに夏実のことだってそう。



三者懇談の時、

夏実が部活を辞めないでいいように、

説得してくれたらしい。



生徒のためなら、

平気で頭を下げられる。



本当に優しい先生だった。



将来のことなんて考えれなかった僕だけど、やりたいことが自ずと芽生え始める。



将来の夢、こんな人になりたいって思うようになったのも、今田の存在が大きかったはず。



そんな追い風が背中を押すように、

僕の高校生活を一変する出来事は起きた。



それは、





バスケ部入部だ。



当然、

入るつもりなんて更々なかった。



だけど、

僕の気持ちを変えた恩師と親友に出会い、

入部を決意する。